今回は、インドネシア人と仕事をする上で絶対に注意しておきたいポイントをピックアップして紹介します。インドネシアの現地企業や日系企業でインドネシア人従業員と関わる機会がある方に特におすすめです。
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<宗教・民族>
・インドネシア人の大半はイスラーム教徒で、教典であるコーランによって豚肉や酒類の飲食が禁止されています。また、牛肉不可のヒンドゥー教徒のバリ人も一定数いるので、不特定多数と食事をする場面においては「ハラルの鶏肉」を用いた料理を指定しておくと無難です。ちなみに、禁止の食品や酒類に関しては、これらの原料由来の製品も禁物です。そのため、食事やお土産を用意するときにも十分な配慮が必要です。
・インドネシアは言語・文化のバックグラウンドが異なる多種多様な民族が集まっており、普段はインドネシア語ではなく全く語彙や文法の異なる地方語で生活している人も多いです。そのため、特にジャワ島・バリ島以外の地方に行く場合は、インドネシア語や一般的なインドネシア文化の常識が通用しない状況も想定しておいても損ではありません。
・インドネシア人は日本人と比べると、大卒人材と中卒・高卒人材との間で思考や行動パターンが別人種と思えるくらいに全く異なります。特に大卒人材は思考や行動が合理的で、どちらかといえば欧米人に近いと言われています。そのため、教育や業務指示などの場面で、相手の状況に合わせた対応が必要です。
・インドネシアでは左手が不浄な部位とされており、左手のみで物やお金の受け渡しをしたり、人を指差したりする行為は非常に失礼な行為とされています。そのため、どうしようもない時を除き、右手、あるいは両手で物やお金の受け渡しをしましょう。
・インドネシア人は頭部を神聖な部位と考えているため、帽子やヘルメット越しであっても他人の頭を触ったり叩いたりするのは非常に無礼な行為とされています。
・どれほど怒りを感じる場面でも物や人に当たる行為は厳禁です。非常に野蛮な行為と思われるのであくまで言葉によるコミュニケーションに止めましょう。
・インドネシア人は日本人に比べてプライバシーの観念が薄く、かなり繊細な質問を悪気なく行う場合もあります。そして、何でもすぐに写真を撮ってブログやSNSにアップする人も多いです。そのため、ある程度までは妥協しても、機密情報などは明確に線引きして場合によっては強く拒否し守秘義務を徹底しましょう
・一般的なインドネシア人は日本人と比べると時間感覚がルーズなので、正確さを要する場面では、なるべく細かい単位まで指定したり、時間指定に余裕を持たせるなど何らかの工夫をする必要があります。
<上司と部下>
・インドネシアにおける伝統的な上司像は絶対服従の対象で、部下は誤った指示を受けても、意見や質問を出すことなく、指示された通りに黙って従順に職務に励みます。また、部下は時折上司の指示を誤って解釈したり忘れたりするときも稀にあります。そのため日本以上に、仕事内容や期限の具体的な指示を出すことが重要になります。また、指示を出す時に部下に聞いた内容を復唱させて部下の理解を確認することは効果的です。
・インドネシア人の伝統的な上司像のもう一つの側面として、部下の仕事環境の他に、家庭や所属するコミュニティに精通した守護者という面もあります。そのため、仕事だけの人間関係と割り切らず、職場以外で本人の抱える問題にもなるべく歩み寄っていく姿勢も大事です。
・インドネシア人は日本人以上に日々の細かなあいさつやコミュニケーションを大事にします。そのため、毎日なるべく声を出してはっきりと挨拶することが大事です。
・インドネシア人は集団の輪を重要視する傾向があり、独り先駆けて変化をしたりすることに対しては後ろ向きです。そのため、何か集団に変化をもたらす際には変化の意義やメリットなどを丁寧に教えるなどの、事前の十分な根回しが大切です。ただ、急を要する場合は権威を振りかざして命令するのが早いですが、内容が曲解されたり、パフォーマンスに影響したりする可能性があるので注意が必要です。
・コミュニケーションの言語は、ホワイトカラー相手であれば、基本的に英語でOKですが、ブルーカラーのワーカー相手の場合は、インドネシア語しか通じない場合が多いです。さらに地方の工場の場合、地方語で生活する人も多く、インドネシア語ですら片言である場合もあります。また、通訳の質も当たり外れが多く、必要な時に呼べないことも多いです。そのため、よく使う表現や安全管理などの面で必ず伝えるべき表現は、マニュアル化して共有し、日本人社員がブルーカラーの現地ワーカーに直接伝えられる体制を整えておいたほうが無難です。
<叱り方・ほめ方>
・インドネシア人はプライドが高いので、人前で怒ると逆恨みする可能性があります。そのため叱る際にはなるべく一対一で穏やかに話し、自身のミスの理由と改善策を理解できるようにしましょう。逆にほめる際には人前でほめるのが良いです。
・日本人は現地企業に行った場合、その立場上、インドネシア人に対して無意識のうちに上から見下ろした傲慢な態度になりやすいです。そのため状況が許せば、叱る場面でも、ほめる場面でも、一度深呼吸して冷静かつ客観的な視点から物事を見つめ直した上で行動したほうが最終的にはいい結果を出せると思います。
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